ロシア文学

フセーヴォロド・ガルシン
ロシアのエカテリノスラフ県(現在のウクライナ領)に生まれる。貴族であった父などの影響で、幼年期からトルストイなどのロシア古典文学を始め、ユーゴーやチェルヌイシェフスキーの著作に親しんだ。
1863 年、ガルシンはペテルブルグに転居し、地元の中学校へ通った。このころから精神疾患に悩まされるようになり、生涯にわたりガルシンを苦しめた。
中学を卒業後、工業専門学校に通っていたガルシンは、戦争が激しくなると従軍を志願してブルガリアなどに赴いた。この戦地での経験や取材を元に、『四日間』や『戦争情景』などの作品を書き上げた。
アッタレーア・プリンケプス
ATTALEA PRINCEPS
ガルシン Vsevolod Mikhailvich Garshin
神西清訳
とある大きな町に植物園があって、園内には、鉄骨とガラスづくりのとても大きな温室がありました。たいそう立派な温室で、すんなりとかっこうのいい渦巻形の円柱が列をなして建物の重みをささえ、その円柱には、枝葉模様をきざんだアーチが、かるがるともたれかかっておりました。そのアーチのあいだには、鉄のわくどりがさながらくもの網(い)のように一面に組みあげられて、それにガラスがはめこんでありました。とりわけ太陽が西に沈みかけて、赤々とした光を浴びせかけるとき、この温室はまたひとしおの美しさでありました。そのとき温室は一面にぱっと燃えたって、真紅の照りかえしがきらきらと五彩に映(は)えわたるありさまは、さながら細かにみがきをかけた大きな宝石を見るようでありました。
